PrAha Inc.

PrAha Inc. のブログ、あるいは社員の観察日記

採用弱者の採用方法(母集団形成編)

弊社(PrAha Inc.)は2018年10月にリクルート出身者5名で創業しました。

 

約2年の採用活動を経て、内定者を含めると現時点のメンバー数は10名。採用経路はこんな感じです:

 

・一人目:リファラル(社員による紹介)

・二人目:Twitter経由の応募

・三人目:Twitterスカウト

・四人目:Twitterスカウト

・五人目:Twitterスカウト

 

あと2名ほど選考中の方が居て、いずれも社員によるリファラルです。

 

採用の全てがリファラルもしくはTwitterという典型的なスタートアップ採用で、今回はそこに到るまでの変遷を「採用弱者の採用方法」としてまとめてみました。

 

 

世の中には採用強者と採用弱者が居る

採用強者とは「応募が簡単に集まる企業」です。海外でいえばGAFA、日本で言えばトヨタリクルート等の大手企業でしょうか。

 

採用弱者とは弊社のように「会社の存在自体が知られておらず、何もしなければ誰も応募してこない企業」です。

 

採用弱者が何に困るか。母集団形成です。応募してくれる人が居ないので、選考する相手が居ません。

 

求人サイトに掲載する

弊社は創業以来、常にエンジニアが不足していたので、まずは試しにベンチャー界隈で名の知れた求人サイトに掲載してみました。

 

当時の弊社の売りは「自由」であること。

 

出社時間が自由、有給自由、副業自由、出社は週1回のみなど、とにかく自由で楽しいことを前面に押し出しました。

 

合衆国の演説のように自由をアピールしまくった結果、サイト全体のランキング2位まで到達し、1年平均で400件近くの応募が集まりました。

 

2位じゃダメなんですか おお、求人サイト出稿イケるやん!」と思ったものの、蓋を開けてみると、447応募からの採用はインターンの学生が1名だけ。

 

他の媒体も試したものの、30名ほどの応募から採用は0名。

 

スカウトメールも試したものの、50通送って返信は5通程度、採用は0名。

 

蛇足ですが、履歴書に書いてもいないのに「Javaの経験を拝見して」とスカウトしてくる企業が僕は嫌いです。

逆の立場に立った時、自社が「あぁ、見境も分別もなくスカウトばらまいてる会社ね」と覚えられることだけは嫌だったので、スカウトメールは全てカスタマイズし、相手の情報に全てを目を通し、1通あたり30分から1時間近くかけて書き上げた魂のスカウトを送りました。

 

にも関わらず、開封も返信もない。

たまに返信をいただけても、当時の弊社は面接過程で業務委託契約を締結し、1ヶ月一緒に働いてから内定を出していたため、選考途中で他社に決まってしまう方が多々おりました。

 

これは流石に費用対効果が悪いと判断して、現在は媒体出稿は全て止めています。

 

 

求人媒体は需要過多のレッドオーシャン

求人媒体は「今の職場に不満がある人」しか登録しないので、そもそもの供給が少ない。

 

求人媒体に登録したユーザーは、その媒体に登録しているすべての企業からアプローチ可能、つまり欲しがる人が多い。

 

要は需給バランスの崩れたレッドオーシャンです。少ない登録者を多くの企業が奪い合うため、優秀な人ほど瞬時に転職市場から消えます

 

しかも僕らは採用弱者なので、採用強者と媒体上で横並びに比較されて選ばれる確率は低い。

 

「年収700万円」と「年収1000万円」を並べられたら1000万円の方がクリックされるし、「よく知らない会社」と「誰もが知っている会社」が並べられたら後者に注目が集まります。

 

「競争が加熱した市場に進出してはいけないんだぞ」と偉い人が言っていたように、競争が激しい場所(求人サイト)で採用弱者が戦うのは得策ではありません。

 

 

いかに転職潜在層にアプローチするか

求人サイトも人材紹介も使えないスタートアップは転職潜在層、つまり求人媒体に登録していないユーザにアプローチする手段を探す事になります。

 

手法は大きく分けて2つ:

・目立つ

・自社に合う人を自力で探して、声をかける

 

 

目立つパターンで真っ先に思い浮かぶのは面白法人カヤックみたいな、際立った採用手法や社内制度で目立つ方法です。

 

弊社も社内ブログを積極的に更新して、僕が土下座したり恥ずかしげもなく変顔を晒す事である程度のアクセスは集まったのですが

 

praha-inc.hatenablog.com

 

 

 

昨今は採用に限らずあらゆる企業が「目立つ」ことを至上命令として取り組んでいるため、企業主体のオウンドメディアやらインスタアカウントやら乱立していて、一人当たりの可処分時間や可処分感情の奪い合いが激化しています。

 

そんな競争に打ち勝って目立てるなら、そちらを事業にした方が良いと思います。

 

それにウケ狙いの人事制度や採用手法ばかり繰り返して、「良い人を採用する」ことが後回しになってしまうのも考えものです。

 

 

なので自社に合う人を自力で探す方向に弊社は舵を切りました。

 

 

 

自社に合う人とは

まずはこれを定義します。

弊社の場合は創業以来「モノ作りが好きな人」と決まっていたので、この一点に絞って探す事にしました。

 

WEBの世界は日進月歩のため、継続的に学習できる人、努力を努力と感じないぐらいモノ作りが好きなことが重要だと考えます。そうでなければ旧世代の技術に取り残されてしまい、生産性が落ちるからです。

 

では、ものづくりが好きな人をどうやって探すのか。弊社が注目したのはTwitterです。

 

 

Twitterは宝の山

技術的なハマりどころや新しく学んだことをTwitterにアウトプットしているエンジニアが多く、割とTwitterを眺めているだけで「お、この人エンジニアだ」と分かるので、僕はTwitterの住民と化しました。

 

2019年からTwitterを使い始めたものの、完全なSNSオンチのため最初は「リツイートってなんだ?」とか思いながら地道にツイートを続け

 

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「この人はエンジニアっぽいな」と思ったらフォローする日々が続きました。1年半ほど経過したあたりで、Twitter経由で気軽に多くのエンジニアと繋がれるようになり

 

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求人広告をツイートすると

 

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5万PVほど集まるようになりました。普通の求人媒体に無名企業が140文字の求人広告を出稿した場合、無料で5万PVは間違いなく集まらないでしょう。

 

ちなみに七夕の日には短冊っぽい求人ツイートをしたり、色々と遊べて楽しいです。こんな求人、審査通りませんからね...

 

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ちなみに今までで一番バズったこのツイート

 

 

 

なぜか560万PV集まりました

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560万回も自社名が露出するなんて通常の媒体ではあり得ないので、Twitter国に移住して本当によかったなぁと思いました。「あぁ犬のオシッコの会社ね!」と覚えられる事に、果たして何の意味があるかは分かりませんが。

 

 

 

TwitterBOTを開発

地道にTwitterを眺めてエンジニアっぽい人を探す作業が辛くなってきたので「そろそろ自動化するか」と思い、週末にTwitterアプリを開発しました。

 

このアプリはTwitterAPIを使用して「特定の単語を多く呟くTwitterアカウントを集計してランキング化」するので、強いエンジニアが使いそうな言葉をよく使うTwitterアカウントの一覧が完成します。

 

 

 

あとはランキング上位からTwitterアカウントを覗き、過去のツイート、GitHubやQiitaを読み込み、自社に合いそうな方に声をかけることで、採用活動が効率化されました。

 

結果的に2期目以降の採用は全員がTwitter経由です。Twitterにいくらか払った方がいいかもしれません。

 

Twitterの良いところは、何と言っても過去ツイートです。「言葉は身の文」と言うように、ツイートの言葉尻や内容を読めば、批判が好きで攻撃的な方は一目で分かります。

 

マウンティングが好きな人が一人でも組織に入ると「マウンティングされる前にマウンティングする」負のサイクルが回るため、どれだけ技術的に優れていても、一緒に働きたくない人を組織に入れてはいけません。

 

その一次フィルタリングとして、ツイッターは良い材料だと考えています。 

 

 

GitHubの見方

正直、GitHubに関しては「土日に活動しているか」を重視していますが、レポジトリなどは参考程度に覗いているだけです。

 

エンジニアがPublicレポジトリに掲載するのは、基本的に遊びか実験的な内容だけ。非公開のPrivateレポジトリを見ない限りエンジニアの実力は測れません。そして普通のエンジニアはPrivateレポジトリの中身を社外に漏らすことはありません。

 

Publicレポジトリを見て実力を判断できるのは一部のOSSコミッターだけなので、OSSコミッターが欲しい場合を除き、GitHubは眺める程度に留めていますが、土日の活動履歴が活発なアカウントは業務時間外も研鑽を続けている証なので、加点要素として扱っています。土日もひたすら働かされている可能性もありますが...)

 

ちなみに弊社はエンジニア系の役員4名もこれを体現しており、土日は基本的に会社の仕事とは別に、個人開発や勉強をしています。

 

 

 

 

 

リファラルに関して思うこと

このように弊社ではTwitterを活用していますが、おそらく最良の採用経路はリファラです。社員の紹介を経由しているため、信頼できること、技術力が分かっていることは大きなアドバンテージです。

 

弊社は年間平均で4,5名リファラル経由の応募があります。

 

当然リファラルはどの企業も出来るわけではありません。「知り合いを勧めたい会社であること」が絶対条件です。

 

弊社は創業以来「ものづくりが好きな人にとって心地よい環境を作る」ことを目指しているため、

 

・一人当たり毎月10万円を自由に物作りに使える枠を用意する(ほぼ使われなかったため廃止。数多のラズパイやarduinoが引き出しに眠る)

・出社をなくす(通勤ラッシュが嫌いなメンバーが多いため)

・副業自由(作りたいものが多いため)

 

などなど、働きやすい環境作りに腐心してきました。

 

一部企業では「紹介経由で入社したら、紹介した社員にxx万円支給」などの制度がありますが、これは例えば「魅力度が100に到達した会社でリファラルが始まるとして、魅力度99の会社」が取り組むべき施策(最後の一押し)で、

 

魅力度が20の会社がマネても「仲間は・・・売れねぇ(ドンッ!)」みたいな話になります。

 

 

採用は実力主義に移行しつつある

ここ20年の採用は「マーケティング」や「ハッタリの勝負」だったように感じます。

 

どれだけ内情がひどくても、求人媒体にお金を出して綺麗な求人を載せて、キラキラ社員を前面に押し出せば、採用できる時代でした。

 

昨今はSNSの普及で個々の発信力が増したことで、嘘や、人事と現場の乖離は看破されやすくなり、ハッタリが効かない実力主義に戻りつつあるように感じます。

 

特にWEB業界は非常に狭い。めちゃくちゃ活発に情報共有が行われています。

 

働いて楽しくない会社に人を増やしても、それは目の粗いザルで砂を掬っているようなものです。退職者が悪評を広めるほど、ザルの目も広がります。

 

良い会社を作ることが一番の採用戦略

 

これが弊社の採用に関する基本方針です。

 

 

ちなみに僕が3年半ほど働いたリクルートは退職者を「卒業生」と呼んで快く送り出すなど、退職者との関係性の保ち方が素晴らしい会社です。

 

以前新卒向けのサービスを作っていた頃、よく大学生の就活相談に乗っていた時期があり、しょっちゅうリクルートを勧めました。本当に多くのことを学べる、良い会社だと思うので。

 

こうした「単純に良い会社だから採用が強い」パターンが今後は主流化していくのかなと想像しています。

 

僕たちが独立した時も、退職時に役員も含め多くの方々が「頑張れよ!」「困ったら相談しろよ!」と声をかけてくださり、なんて懐が深いんだろうと感動したことを覚えています。「同期5人で独立します」って言われたら、普通の会社は代表を八つ裂きにすると思います。

 

この会社が大きくなった時に「リクルートで多くのことを学びました」と言うことが一番の恩返しだと思い、日々勤しんでいます。

 

 

求人の4要素

僕は求人を作成するとき、4つの要素で競合と比較しています。

 

・ブランド
・給料

・仕事の面白さ
・福利厚生、勤務条件

 

 

ブランド

言うまでもなく、ブランドのある企業は強い。大抵の人は有名な会社で働きたいものです。自尊心をくすぐられます。

 

給料

これも重要な要素です。誰だって年収の高い会社で働きたいものです。

 

弊社エンジニアの年収レンジは540~721万円です。

 

弊社は全ての開発依頼をインバウンドか紹介で頂いているため営業がおらず、仕事を仲介する媒体なども利用したことがないため、中間コストがほとんどかかりません。

 

そのため設立2期目の会社にしては社員の給料を高く設定できていますが、それでも上場企業には劣ります。そこで張り合ってはいけません。

 

採用弱者は、「ブランド」と「給与」の欠点をいかに覆すかが勝負ではないでしょうか。

 

続く2要素が成否を分けます。

 

仕事の面白さ

どんなに有名な企業で給料が高くても、肝心の仕事内容が退屈だと魅力は弱まるでしょう。

 

「仕事の面白さ」は非常に主観的で切り口が様々なので、企業側で事前に定義しておくと良いでしょう。弊社が「仕事が面白い」と定義するのは以下のような状態です:


・新しい事を学び、活用できる

・切磋琢磨できる仲間が居る

・ものづくりの意欲に満ちた仲間が居る

・利用者に愛される、役立つモノを作れる

・友人のような関係性で、互いを尊敬し合いながら働ける

 

 

 

 

 

弊社は役員全員が週末も個人開発をしたり、社外でも創作活動に勤しんでいます。

 

DDDや設計原則など学ぶべきテーマを決めて、社内勉強会で毎週2時間ずつ集中的に学ぶ期間を2ヶ月ほど取ったり、顧客と合同で技術勉強会を開催したり、日々技能向上に時間を割いています。

 

設計周りのコードレビュー、テストなどをはじめソフトウェアの品質を重視して、良いものを作れる術を身につけられる組織を目指しています。

 

こうした環境を「面白い」と感じてくれる人が居れば、ブランドや給与面で劣っていても弊社を選んでくれる可能性があります。

 

もちろん、ここに面白みを感じない人も居るでしょう。お金を稼げることや、どでかいサービスを作れることを仕事の面白さと考える人も居るはずです。

 

こうした方に対しては今の弊社では給与やブランドを上回れないので、「来て欲しいけど、今は採用できない」ことを受け入れるしかありません。

 

 

ちなみに弊社は定期的に自社に関するアンケートをとってます:

 

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勤務環境

遠方の優秀な人に選んでもらうため、弊社は創業以来リモートが基本で、コロナ騒動の前から出社は週1日でした。

 

弊社には内定者を含めて大阪在住の優秀なエンジニアが2名います。現在選考中の方も、大阪在住の方がいらっしゃいます。

 

いかにブランドがあり給与が高い企業でも、引っ越したくない人に引越しを強制しては、選んでいただけない事もあるでしょう。こうした方には、リモートで働ける弊社は選択肢に挙がるかもしれません。

 

出社をやめた経緯には「通勤時間が無駄」と考えたことも含まれています。

 

弊社は「ものづくりが好きな人」の会社です。通勤で毎日1時間近く無駄にするより、その時間をものづくりに充てたい。

 

「どういう人を採用したいのか」「採用したい人が魅力に感じる制度なのか」と、制度の枝葉末節にも一貫した意思を通わせることが採用弱者には重要だと感じます。

 

一方でリモート勤務により社員同士の仲間意識が薄れないよう、週に1度はリモートランチをしたり、定例を行ったり、月に1度の高級焼肉、半年に1度の社員旅行を通じて、一緒に働くことを楽しめる会社作りに取り組んでいます。

 

弊社としては「友人であり、一緒に働く仲間である」ぐらいの距離感で働きたいため、こうした環境を良しと感じる方であれば、ブランド・給与で劣る弊社を選んでくれるかもしれません。

 

 

 

まとめ

長々と書きましたが、まとめに入ります。

 

・企業には採用強者と採用弱者がいる

・求人サイトは採用弱者に適した採用手法ではない

・採用弱者が採れる手段は「目立つ」か「自社に合った人を探す」か

・自社に合った人を探す上で、弊社はTwitterを活用している

リファラルも有効だが、効果は自社の魅力に依存する

・採用は「ハッタリ勝負」から「実力勝負」に移行しつつある

・求人の魅力は4要素で分解して考える

・いかに「ブランド」と「給与」をひっくり返すかが、採用弱者の勝負どころ

 

 

 

そんな弊社は常にWEBエンジニアを募集しております。

面白そうな会社だと思った、仲間と切磋琢磨したい、焼肉が食べたい。

そんな風に感じてくれた方がいたら、ぜひご応募ください!!

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また今回の記事には触れませんでしたが、最近はデザイナーの採用も始めております!!ご興味をお持ちいただいたデザイナーの方がいましたら、DMでご連絡ください!

 

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